
ギャンブルの最大の醍醐味は「勝ったときに勝利金がもらえること」、これに尽きるのではないでしょうか。
モノを購入すれば手元に商品が残りますが、ギャンブルは負けた場合、何も残らないばかりか手元のお金に羽根が生えて飛んでいきます。
それでもギャンブルを楽しいと思えるのは、勝ったときのリターンが見込めるからです。
ではここで質問です。オンラインカジノで儲けたときは、税金がかかるのでしょうか?
働いて稼いだお金に税金がかかることは知られていますが、ギャンブルで得た勝利金についての税金の仕組みを知らない人は多いでしょう。
ここでは、オンラインカジノで勝ったときの税金の有無や、納めなかった時にどうなるかなどを解説していきます。
勝ったお金は課税対象
「宝くじは税金がかからない」という話を聞いたことがある人にとっては、オンラインの勝利金が課税対象になるという話は寝耳に水かもしれません。
実はオンラインカジノで勝利金を手にしたときは税金がかかります。
あまり知られていないのですが、宝くじは購入したその時点で税金がかかっています。
宝くじは競馬などの公営ギャンブルとは少し仕組みが違っているので、「非課税」と勘違いしている人が多いのですが、きちんと税金を支払っているのです。
宝くじは購入時に税金を徴収している
宝くじの販売元は都道府県と20の指定都市ですが、その収益金は次のグラフのように割り当てられています。
グラフを見ると、当せん金に使われているのは全体の半分にも満たないということがわかります。
つまり1枚300円で購入できる宝くじは、最初から半分以上が当せん金以外に使われると決まっているのです。
もう少しわかりやすく言うと、宝くじは購入時に一律で税を徴収する仕組みとなっていて、当たっても当たらなくても、購入した人は全員税金を支払っているわけです。
すでに税金を支払っているのに、高額当選したから課税するとなると二重課税になります。
ですから宝くじは高額当選しても税金を支払う必要がないのです。
オンラインカジノの勝利金は「一時所得」
オンラインカジノは、チップを購入するときに税金を支払っているわけではありません。
ですからオンラインカジノで勝利金を手にしたら、一時所得とみなされて課税対象となります。
一時所得とは
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
この所得には、次のようなものがあります。
(1) 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
(2) 競馬や競輪の払戻金
(3) 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
(4) 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。)
(5) 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
オンラインカジノの勝利金は、働いて得る給与でもなく、アパート経営のように継続して得られる所得でもなく、「(2) 競馬や競輪の払戻金」と同様の一時所得に当てはまります。
オンラインカジノはほかのギャンブルよりも勝利金を手にしやすいと言われていますが、勝ったら納税対象になるということは覚えておきましょう。
負けた金額は収益から控除できない
負けた日の金額を、勝った日の金額から差し引くことはできないんだよ。
通常、一時所得からは経費を差し引くことができますが、オンラインカジノの勝利金は考え方が少し異なるため注意が必要です。
ギャンブルは、勝つこともあれば負けることがあるのが当たり前です。
ここで例としてAさんの1年間の収支を見てみます。
プレイをした日付 | 賭けた金額 | 払戻金額 | 損益 |
1/20 | 10万円 | 40万円 | +30万円 |
3/20 | 15万円 | 25万円 | +10万円 |
4/20 | 10万円 | 0円 | -10万円 |
6/20 | 5万円 | 40万円 | +35万円 |
8/20 | 10万円 | 3万円 | -7万円 |
11/20 | 20万円 | 2万円 | -18万円 |
12/20 | 15万円 | 5万円 | -10万円 |
合計 | 77万円 | 115万円 | 30万円 |
ここでポイントとなるのが、勝った日と負けた日です。
単純に考えれば、1年間のトータル損益は30万円ですから、この金額が所得税の対象額になりそうですね。
ちなみに一時所得は特別控除額が50万円ありますから、30万円から特別控除額を差し引けば、非課税になると考える人は多くいます。
しかしオンラインカジノの勝利金の計算は、負けた分を勝った金額から差し引くことはできません。
負けた日の金額は計算に入れず、勝った日だけを抜き出して計算します。
つまり課税対象となるのは以下の通りです。
プレイした日付 | 賭けた金額 | 払戻金額 | 損益 |
1/20 | 10万円 | 40万円 | +30万円 |
3/20 | 15万円 | 25万円 | +10万円 |
6/20 | 5万円 | 40万円 | +35万円 |
合計 | 30万円 | 105万円 | 75万円 |
利益が出ている1/20・3/20・6/20分以外は計算から除外され、利益が出た3回分だけを課税対象とするのです。
この表からわかるように、Aさんはこの年、75万円がオンラインカジノによる一時所得になります。
所得税の計算方法
オンラインカジノで手にした勝利金は「一時所得」扱いとなり、計算方法は以下の通りです。
前述のAさんの場合に当てはめてみます。
勝利金の合計は105万円、支出金額は30万円、特別控除額は上限50万円で、
105万円-30万円-50万円=25万円
つまりAさんのオンラインカジノによる一時所得は25万円になります。
ここで早合点して、一時所得の25万円にまるまる税金がかかると勘違いする人がいますが、実際にかかる所得税は、一時所得をもとにさらに計算をし、課税対象額を割り出す作業が必要です。
Aさんはオンラインカジノで25万円の一時所得が出ていましたから、1/2をかけて所得税の課税対象は12万5千円になります。
ここに所得税法で定められた税率をかけた値が実際に支払う所得税になりますが、ほかに給与所得などほかの収入がある場合は総所得金額で税率を照らし合わせるようにしましょう。
以下に、国税庁が公表している所得税率の速算表を記しておきます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1800万円を超え4000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
確定申告
会社員の人にとってはなじみが薄い「確定申告」、しかしオンラインカジノで課税対象になるほど勝利金を受け取った場合は、確定申告をして税金を納める必要があります。
確定申告の時期と対象となる期間
確定申告の時期は、毎年2月16日から3月15日までの1か月間です。
対象となるオンラインカジノのプレイ期間は、確定申告を行う前の年の1月1日から12月31日までの1年間です。
会社員の人はすでに年末調整で給与所得分の計算は終わっています。
会社から源泉徴収票を受け取っているはずですから、それをもとにオンラインカジノの一時所得分について改めて確定申告を行います。
確定申告に必要な書類
確定申告に必要な書類はそうたくさんあるわけではありません。会社員の場合は次のものです。
- 源泉徴収票
- 支払調書
- 支出を証明する領収書
もしほかで申告手続きをしていないならば、合わせて医療費の領収書・社会保険料(国民年金保険料)控除証明書・生命保険料の控除証明書・地震保険料の控除証明書などを準備して、一緒に申告するようにしましょう。
書類のポイントは、ふたつめの「支払調書」です。
これはオンラインカジノ側から発行してもらうもので、申告に際に必ずいるわけではないのですが、申告書を作成するときに準備しておくと大変重宝します。
発行までに時間がかかることを考慮して、年末年始にオンラインカジノ側へ支払調書を請求しておくことが大切です。
ただしオンラインカジノによっては支払調書を発行してくれないところもありますので、日ごろからExcel等を使いカジノで遊んだ日の収支を記録しておくことがポイントです。
確定申告の提出手段
確定申告の提出手段は3通りです。
①税務署(申告会場)で提出
②e-Taxによるオンライン提出
③郵送による提出
忙しい人におすすめなのが、②のe-Tax利用です。
e-Taxはインターネット上で確定申告をすべて終わらせることができて、24時間いつでも申告ができます。
e-Taxで申告手続きを進めるには、電子証明書・開始届出書・利用者識別番号の3つを事前に取得しておきましょう。
あとは国税庁のホームページから簡単に手続きを進めることができます。
パソコンだけでなくスマートフォンからも利用可能ですから、自宅で簡単に確定申告を済ませてしまいたいという人にはおすすめです。
所得税の納付方法
確定申告の際に記した所得税は、納付期限までに収める必要があります。
納付方法は、次のふたつです。
- 現金
- 銀行引き落とし
現金の場合は納付書を持参して、3月15日までに金融機関等で払い込みをしてください。
振替納税手続きを行えば、銀行引き落としでの納付も可能になります。
現金だと納付期限は3月15日なのですが、振替納税にすると4月中旬に銀行口座から引き落としになります。
振替納税は、約1か月納付期限を遅らせることができたり、払い込みに行く手間が省けたりとメリットがありますので、うまく利用するといいでしょう。
勝利金を会社にばれないように申告するには?
先ほど、所得税の納付は現金や銀行引き落としが可能と述べましたが、確定申告で計算するのは所得税の計算のみです。
実は確定申告をすると、申告内容が住んでいる市町村にデータとして送られ、今度は自動的に住民税が計算される仕組みになっています。
会社員など給与所得者の場合、住民税は前年の給与所得に対して課税され、その年の6月から翌年の5月にかけて毎月の給与から天引きされるのが一般的です。
「オンラインカジノの勝利金を確定申告したら会社にばれてしまった」
これは、住民税が昨年と比較して増額されたことから、経理担当者には給与所得以外の収入があったと推察できるからでしょう。
営業成績が格段に良くて、昨年よりも大幅に年俸がアップしたのであれば、住民税が多くなるのは当たり前です。
しかし給与がさほど変わらないのに、住民税だけが上がっているのであれば、当然給与以外で何か収入があったとみるのは自然な流れかもしれません。
もちろんオンラインカジノ以外にも、不動産収入や副業などで収入がアップすることは考えられますが、もし会社側にオンラインカジノなどの一時所得がばれたくないのなら、住民税の納付方法に気を付ける必要があります。
特別徴収から普通徴収への切り替え
会社員が給与から毎月住民税を天引きされることを「特別徴収」と言います。
会社は従業員の給与から住民税を差し引く「特別徴収義務者」であり、そこで働く従業員は、特別徴収により住民税を納めることが地方税法で義務付けられています。
住民税の納付方法はこのほかにも「普通徴収」がありますが、これは個人事業主や退職して次の仕事が決まっていない人などが対象です。
給与所得者である会社員がすべての住民税を「特別徴収」から「普通徴収」に切り替えることをできればいいのですが、近年は地方税収の取り損ないを防ぐため、会社員の住民税は特別徴収にすることを徹底する自治体が増えています。
そのため、給与所得における住民税を普通徴収に切り替えることは難しいことが少なくありません。
そこで利用したいのが、確定申告時に一時所得の住民税を普通徴収にする手続きです。
確定申告書類には「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」という項目があり、ここを「自分で納付」にチェックすることで、給与は特別徴収・一時所得の住民税は普通徴収、と分けて納付することが可能になります。
こちらが確定申告書Bにおける第二表です。
赤矢印で記した箇所が「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」の選択箇所です。
下の段、「自分で納付」に丸を付けて申告を行うと、オンラインカジノによる一時所得分の住民税は普通徴収になり給与天引きになることはありません。
会社に給与以外の収入があったということがばれたくない場合は、確定申告の際に忘れずにチェックを入れておきましょう。
尚、念のために確定申告が終了したら、市町村役場に行き、一時所得がきちんと普通徴収になっているか確認しておくと安心です。
税金を納めないとどうなる?
今までオンラインカジノで手にした勝利金に所得税が発生した時、その納付方法等について説明してきました。
しかしオンラインカジノの勝利金に税金がかかることを知らなければ、ひょっとしたら納税せずに済ませてしまうことがあるかもしれません。
そのようなときは、いったいどうなるのでしょうか。
競馬やパチンコは追徴課税の対象になりにくい
オンラインカジノの勝利金が課税対象になるという話は説明しましたが、もちろん競馬やパチンコなども同じように課税対象です。
しかし芸能人が万馬券で大儲けした時は、TVニュースで所得税がたっぷり持っていかれたと話題になりましたが、身の回りの人たちで、パチンコや競馬で儲けて追徴課税の対象になったという話はほとんど聞きません。
これは競馬やパチンコが課税対象となっていないのではなく、入出金の仕組みの違いによるものです。
競馬やパチンコは現金で馬券を購入したり、玉を借りたりします。
パチンコ店は現金でのみ遊ぶことができ、競馬の馬券購入も基本的にはクレジットカードの利用はできません。(JRAダイレクトで登録すればカードも一部利用可能ですが、上限金額設定があります)
利用者が直接現金と引き換えにギャンブルを楽しむため、「誰が」「どこで」「いくら」ギャンブルを楽しんで勝利金を手にしたのかを追跡することはほぼ不可能です。
もちろん競馬やパチンコ等で、1回の利益が特別控除額の50万円を超えていたら課税対象となり、納税の義務が発生します。
しかし実際には払い戻しに関しても、身分証明書などの提示はなく現金で行う仕組みである以上、税務署が人物を特定するのは困難です。
つまり、競馬やパチンコ等のギャンブルは、「課税対象」だけれども「見逃されている」部分が多いというわけです。
オンラインカジノは履歴が残る
一方でオンラインカジノは、ログインするときのアカウント情報や、入出金の記録がデータとして残ります。
オンラインカジノから出金する際は、身分証明書等の提出が求められ、さらに最終的には銀行口座を通した払い戻しをすることになり、税務署がデータを基に人物を特定することが容易です。
オンラインカジノはほかのギャンブルと比較して「納税を忘れないように」と言われるのは、税務署がしっかりと追跡できるからこその注意喚起なのです。
納めなかった場合は追徴課税
もしオンラインカジノで課税対象になるほど勝利金を手にしていたのに、納税の義務を怠った場合は「追徴課税」が来ることになります。
追徴課税で支払う金額は、本来納めるべき税金額だけではなく、付帯税と呼ばれるペナルティが加算された金額です。
この付帯税にはいくつかのケースがあり、それぞれ税率が異なります。
どちらにしても納税を怠った場合のペナルティは大きいので、オンラインカジノで課税対象となったときは忘れずに納税することが重要です。
過少申告加算税
過少申告加算税とは、確定申告書に記載された一時所得の金額を少なくして申告した場合に、本税に対して追加で課される付帯税です。
過少申告加算税 | 税率 |
・所得税の申告期限までに申告書を提出 ・税務調査を受ける前に「自主的」に修正申告 |
なし |
・所得税の申告期限までに申告書を提出 ・税額が過少であることを税務署に指摘されて修正申告 |
10% or 15% |
無申告加算税
無申告加算税は、納付期限内に申告を行わなかったときに加算される付帯税です。
無申告加算税 | 税率 |
納付すべき税額に対して50万円まで | 15% |
納付すべき税額に対して50万円を超える部分 | 20% |
重加算税
過少申告加算税や無申告加算税の内容が悪質であると税務署が判断した場合に、さらに加算されるのが重加算税です。
重加算税は特に重いペナルティの意味合いが強く、ほかの税金のように経理の上で損金として扱うことができません。
重加算税 | 税率 |
過少申告加算税が追徴される場合 | 過少申告加算税に代わり35% |
無申告加算税が追徴される場合 | 無申告加算税に代わり40% |
※繰り返し重加算税を指摘された場合、最高税率50%
延滞税もプラスされる
オンラインカジノで得た勝利金の納税を怠った場合、本来支払うべき税額にプラスして付帯税が加算されることはすでに述べました。
しかし実際にはそれだけではありません。納期限を過ぎた分には「延滞税」も加算されるのです。
このようにオンラインカジノで儲けが出ているのに、納税を行わなかった場合はかなり高額なペナルティが課されることになります。
オンラインカジノは誰でも手軽に参加できるギャンブルで、ペイアウト率も高く高額な払戻金が発生することも少なくありません。
気分よく1年間を終わらせられるよう、日々の賭け金と儲けについてはしっかりと管理し、納税の義務が発生した場合にはきちんと期限までに納めるようにしましょう。