
カジノ法案が日本で可決されたと言っても、その中身は「カジノを含む統合型リゾートを誘致しよう」という法律であり、決してカジノが認可されたわけではありません。
そんなカジノが非合法となっている日本でも、着々と人気が高まっているのがオンラインカジノです。
「オンラインカジノは逮捕されない」
そんな噂を耳にしたことはないでしょうか。けれどもそれは真実ではないのです。
日本におけるオンラインカジノの逮捕事例について詳しく見ていきます。
スマートライブカジノでプレイヤーが逮捕!?
日本で少しずつオンラインカジノを楽しむ人が増えてきた2016年、衝撃的な事件が起こりました。
それがスマートライブカジノ事件です。
2016.3.10 21:11
ネットカジノ客の男3人を逮捕 海外の会員制サイト「スマートライブカジノ」利用 京都府警
海外のインターネットのカジノサイトで賭博をしたとして、京都府警は10日、賭博(単純賭博)の疑いで埼玉県越谷市の制御回路製作会社経営、関根健司(65)▽大阪府吹田市の無職、西田一秋(36)▽埼玉県東松山市のグラフィックデザイナー、中島悠貴(31)-の3容疑者を逮捕した。府警によると、無店舗型のオンラインカジノの個人利用客が逮捕されるのは全国初とみられる。
日本で初めてのプレイヤー逮捕
スマートライブカジノの逮捕劇が世の中を震撼させたのには訳があります。
それはオンラインカジノにおいて、日本で初めてプレイヤーが逮捕されたからです。
今までも決して摘発事例がなかったわけではありませんが、逮捕されるのは決済代行業者や胴元がメインであり、プレイヤーが逮捕されることはありませんでした。
ところがこの一件では、捕まったのが個人で楽しんでいたプレイヤーであったため、今まで「オンカジはグレーゾーンだからOK」と思っていた人たちが一様に驚き、明日は我が身かと内心ドキドキしていたのです。
従来の定説「プレイヤーだけを摘発することはできない」
日本で懲役刑となる賭博罪には、常習賭博罪と賭博場開張図利罪があります。
ここで争点となるのは、ギャンブルをする人とギャンブルを提供している人、どちらのほうが罪として重いのか、という点です。
日本の法律では、「常習賭博罪<賭博場開張図利罪」と明確に罪の重さが線引きされています。
明らかに違法営業である闇カジノは別として、日本で楽しまれているオンラインカジノのほとんどは、海外でライセンスを取得し、合法的な運営をしています。
いくら日本でギャンブルが禁止されているとはいえ、きちんとライセンスを取得している海外の運営企業を日本の刑法で取り締まることはできません。(そんなことをしたら国際問題に発展します)
「プレイヤーを常習賭博で逮捕したいなら、オンラインカジノ運営も一緒に摘発しろ」
これが日本の賭博罪の解釈です。
オンラインカジノが日本の刑法で認められているのではなく、カジノがグローバル化して、インターネット上で楽しめるという事実に、まだ賭博罪が追い付いていないのです。
皮肉にも、古い賭博罪がプレイヤーを守っているということでもあります。
なぜ逮捕された?
ここでの疑問は、なぜ今回に限ってプレイヤーが逮捕されたのか?ということです。
いろいろ検証した結果、以下のことが浮かび上がってきました。
- 日本人専用テーブルが用意されていた
- 日本時間の夕方~深夜というゴールデンタイムにイベント開催
- 日本人女性ディーラーと日本語でチャットしながらプレイが可能
スマートライブカジノの運営はイギリスです。
運営側は、増えつつある日本人プレイヤーのために、魅力あるサービスを提供してさらなる顧客獲得を狙ったのでしょうが、かえって警察から疑惑の目を向けられる原因となってしまいました。
ただしこの事件は、警察の勇み足による逮捕だったのでは?という声が上がっているのも事実です。
どういうことかというと、警察が当初考えていたのは、メインとなる運営はイギリスで行われていたものの、日本人向けサービスのライブカジノは日本国内で行っていると踏んでいたのではないかとされているのです。
しかも逮捕されたプレイヤーたちは、日本でライブカジノを行っている胴元だと間違えられていた可能性も浮かび上がってきています。
最終的に、なぜ警察がスマートライブカジノで楽しんでいただけのプレイヤーを、「逮捕」にまで踏み込んだのか、明確な理由は明らかにされていません。
しかしあまりにも日本人にむけて過剰なサービスを提供していることは、最悪の場合、逮捕の危険性があるということは忘れてはいけないでしょう。
なぜ身元がバレた?
でも、プレイヤー側にも身バレするような原因があったみたいなんだよね。
オンラインカジノをプレイするには、まずアカウント登録する必要があります。
決済サービスを利用してゲーム上のマネーと交換し、儲けた分は再び現金として引き出すことも可能です。
お金のやり取りを行っているわけですから、セキュリティのチェックは厳重に行われていなければなりません。
その上、インターネットという特殊な環境での運営は、個人情報の漏洩等には細心の注意が払われているはずなのです。
それなのになぜプレイヤーの身元が警察に特定され、逮捕にまで至ってしまったのかは、今後ゲームをプレイしていく人たちが注目すべき点と言えます。
警察は捜査上の秘密を明らかにすることはありませんから、ここからは推察することしかできません。
考えられるポイントとしては、
- 個人が特定されるようなアカウント名の使用
- ゲーム中のチャットの内容
- ブログやSNSにオンラインカジノの内容を書き込む
このような点が、警察の内偵捜査をしやすくしたのではないかとみられています。
ほかにもライブ画面でのプレイヤーの名前がアカウント名そのものであったり、利用していた入金方法がクレジットカードだったり、内偵調査をするうえで個人を特定しやすい材料が重なってしまったことが個人特定につながったのでしょう。
逮捕されたプレイヤーはどうなった?
何か事件が起きた時、新聞やニュースなどで第一報が伝えられますが、その後どうなったのかを詳しく報道することは少ないものです。
この事件でも、プレイヤーの逮捕という衝撃的な一報は瞬く間に広がりましたが、その後が詳しく報道されることはありませんでした。
結論を先に言うと、逮捕された男性3人のうち2人は罪を認めて略式起訴となり、残りの1名は最終的に不起訴となっています。
略式起訴とは、罰金刑が認められている事件で、被疑者が全面的に容疑を認めている場合に適用されます。
今回は逮捕者のうち2人は全面的に容疑を認め、罰金を支払うことで略式起訴となりました。
裁判を行うことはしませんが、2人には「前科」がついてしまったのです。
しかし注目されたのは残った1人の対応です。
彼は略式起訴を拒否し、オンラインカジノでプレイしたことは認めたものの、逮捕されたことについては異議を唱えて裁判で争う姿勢を示したのです。
この行動は、警察や検察もかなり驚いたでしょう。
なぜなら、今までカジノで逮捕された人たちは、裁判で争うことをせずに略式起訴を受け入れてきた事例ばかりだったからです。
つまり、オンラインカジノのグレーゾーンについて裁判で争う姿勢をとった初めてのケースとなり、再び世の注目を集めることになりました。
このような行動をとれたのは、担当した弁護士のバックアップが大きいです。
担当した弁護士は、自身もプロ雀士として活躍する人物で、賭博罪のグレーゾーンについては前々から思うところがあったとブログでも書いています。
そんな彼のとった行動は、従来の事例に基づいて、「賭博利用者を検挙するのであればその胴元も一緒に検挙されなければならない(対向犯)」との主張を検察庁に提出することでした。
警察は当初、胴元だと見込んで3人を逮捕し起訴するつもりだったものの、取り調べを進めていくうちにただの賭博常習者であるということが判明したのでしょう。
日本の警察が海外の運営元(ライセンスを取得していて合法)を検挙することなどできるはずもなく、起訴の方向性は賭博場開張図利罪をあきらめて賭博罪へ切り替えることになります。
今までの摘発事例と同様、被疑者2人は容疑を認めたため事が大きくなることはありませんでしたが、残りの1人が裁判で争う姿勢をみせたことで検察は慌てふためきます。
実際に弁護士が主張した「対向犯」の概念が認められたかどうかはわかりませんが、最終的に検察側は「不起訴」という判断を下すことになったのです。
略式起訴を受け入れた2人は「前科」がつき、裁判で争う姿勢を見せた1人は「不起訴(前科なし)」になったという結果は、オンラインカジノの違法性を問うことが非常に困難だということの前例となりました。
注)この不起訴は、決して「罪とならず」「嫌疑なし」での不起訴処分というわけではなく、「嫌疑不十分」「起訴猶予」の可能性も含んでいます。つまり「犯罪としては成立しているけど、裁判で勝てるかどうか微妙だから起訴しなかった」ということも含んでおり、今後もプレイヤーが罪に問われる可能性は残したままです。
スマートライブカジノ事件から学ぶこと
この事件は、日本のオンカジプレイヤーたちに大きな衝撃を与えましたが、逮捕されたプレイヤーの1人が裁判で戦う姿勢を見せたことで、現在における問題点を浮き彫りにする形となりました。
オンラインカジノは決して合法と認められたわけではないからこそ、プレイヤーは十分に配慮して楽しむ必要があります。
- 日本人専用サービスがあるようなサイトは避ける
- アカウント名がそのままプレイヤー名になっているところは避ける
- チャットを楽しむときに個人情報を書き込まない
- SNSにプレイ内容を書き込まない
今回のことをきっかけに学んだことは、いろいろあったはずです。
スマートライブカジノ事件以降、プレイヤーの逮捕という事例は起こっていませんが、オンラインカジノが法的にグレーゾーンである以上、ゲームを楽しむときには日本独自のルールが要求されるのだという点は頭に置いておくべきなのです。
決済サービスも摘発対象!?NetBanQ事件
オンラインカジノと賭博罪についてはいろいろな憶測がされていましたが、とうとう逮捕者が出たと話題に上がったのが2016年2月に起きた「NetBanQ事件」です。
国内口座使い客に賭博か オンラインカジノ全国で初摘発 会社役員ら逮捕 千葉県警
2016年2月16日 10:22 | 無料公開オンラインカジノが利用できる国内口座サービスを運営し客に賭博をさせたとして、千葉県警サイバー犯罪対策課は15日、常習賭博の疑いでさいたま市浦和区本太1、通信会社役員、益田伸二(50)と埼玉県蓮田市見沼町、自称会社員、島田賢一(43)両容疑者を逮捕した。益田容疑者らはほぼ全国の客約1600人に約23億2800万円を賭けさせ、約10億4400万円の収益を上げていたとみられる。インターネットを使った無店舗型オンラインカジノに関して賭博罪を適用したのは全国初。
この事件は海外の合法オンラインカジノ自体ではなく、運営者とプレイヤーの間で決済サービスを行う運営者の逮捕劇ですが、グレー部分を表面化させた事件でもありました。
決済サービスの運営者が逮捕
リアル店舗を持たないオンラインカジノは、お金のやり取りはすべてインターネット上で行われます。
一般的には、日本では賭博が禁止されているため、海外の決済サービスを利用します。
しかし、NetBanQの運営は日本国内で行われており、これが賭博行為の幇助だとみなされたのです。
この業者が実際に行っていた業務内容は、海外で受けるサービスと特に変わったことはありません。
そのため、日本語サービスが充実している点は日本人にとって安心できる材料であり、多くの人がNetBanQを利用していました。
警察はこうした実情を知り、「日本人が決済サービスを行っている」という点に疑惑の目を向けたのです。
日本の賭博罪は、賭博行為を行うことも、場を提供することも法律で禁止されています。
NetBanQはカジノを運営する立場にはないものの、警察は「お金を換金するという行為が賭博を幇助する立場(=胴元と同様にみなす)」と判断したのです。
きっかけはまったくの別案件
そもそもこの衝撃的な事件の発端は、前年に全く別の案件で、ある人物が逮捕されたことに遡ります。
この人物は、ネットオークションで偽エラーコイン(製造段階でミスが生じた硬貨で希少価値がある)を販売したとして逮捕されました。
その後の取り調べで、この人物はオンラインカジノの利用履歴があり、芋づる式に日本人が運営する決済サービスの存在が警察に知られることになったわけです。
世界中に2000以上の数があると言われるオンラインカジノで、日本人による運営に気づき、摘発までこぎつけたのは偶然の産物かもしれないとまで言われています。
逮捕者のその後
NetBanQ事件では、この決済を利用してゲームを楽しんでいたプレイヤーも書類送検されています。
逮捕された人の多くは罪を認め、単純賭博罪による略式起訴を受け入れましたが、一部の人たちはこれを不服とし裁判で争う姿勢を見せました。
結果として略式起訴を受け入れた人には前科がつき、争う姿勢を見せた人には前科がつかないということになったのです。
また運営者たちは「決済サービスを行っていただけで、賭博には当たらない」という主張をしていたと言われています。
運営者がその後どうなったかについては報道がされていないためわかりませんが、スマートライブカジノの一件を担当した弁護士の見解を参考にする限り、賭博罪による立件は無理があり、警察側の強引な逮捕劇の可能性は捨てきれません。
ただしいくらライセンスを取得しているオンラインカジノであっても、決済で日本のサービスを選択するということは、危険性をはらんでいると認知する一件であったことは確かです。
結論として、安心してゲームを楽しむためには、オンラインカジノの決済は海外のものを利用すべきであるということがわかりました。
被害が大きかったドリームカジノ事件
オンラインカジノ関係の事件で、グレーではなく「黒」と言われているのがドリームカジノ事件です。
2016.6.10 11:48
オンラインカジノ運営業者を逮捕 全国初…国内運営と判断
インターネットのオンラインカジノサイトを運営し客と賭博したとして、京都府警は10日、常習賭博容疑で、大阪市中央区本町橋の会社役員、坂本拓也容疑者(39)ら実質運営者5人を逮捕したと発表した。府警によると、坂本容疑者は「逮捕事実には誤りがある」などと容疑を否認している。無店舗型オンラインカジノの運営者が逮捕されるのは全国初という。
逮捕容疑は、共謀し、大阪市天王寺区に事務所を設けオンラインカジノ「ドリームカジノ」を運営し、平成25年12月~今年3月、サイト上で複数回にわたり不特定多数の客を相手に、ポーカーの賭博をしたとしている。
(中略)
ドリームカジノは、カジノが合法なオランダ領キュラソー島で営業許可を受けているとサイト上に記載していたが、サポートは日本語のみで行われていたことなどから、府警は国内で運営されていると判断した。
オランダ領キュラソー島で運営と記載
世界中で楽しまれているほとんどのオンラインカジノは、海外で運営されています。
日本には賭博罪や賭博場開張図利罪が定められているため、国内で運営することができないからです。
ドリームカジノの運営は、サイトによるとオランダ領キュラソー島、決済サービスもキプロスの企業が行っていると記載されていました。
キュラソー島と言えば、ライセンスが緩いと噂されることも多い中南米にある国ですが、キュラソーはオランダ領ですからそういった周辺国とは異なります。
世界的にも有名なオンラインカジノが取得しているライセンス国であり、比較的信頼性の高いライセンスとしても有名なのです。
そんなキュラソー島のライセンス発行を受けているとホームページに記載されていたことから、日本人の多くが安心してプレイできると認識していました。
実際には日本で運営されていた!?
一般的なオンラインカジノは、運営会社が海外にありサポートや運営をそこから行います。
しかしドリームカジノは海外サーバーを利用して、実質的な運営は大阪で行っていたことがわかっています。
ドリームカジノは国内にも多くの利用者がいましたが、彼らはまさか大阪で運営されているとは思っていませんでした。
警察が実質的な運営者を逮捕し、大阪市内の事務所へ捜査が入っており、プレイヤーたちの情報も警察の手に渡っていますが、この件で彼らが逮捕されたという話は入ってきません。
もし日本での運営がプレイヤーたちにも知られているのであれば、賭博罪における「対向犯」が立証されることになりますから、プレイヤーたちに逮捕の手が及んでもおかしくはないでしょう。
こうしたことからドリームカジノは表面上、海外で運営されていると見せかけて、実際には日本国内で運営をしている明らかな違法行為だったとわかります。
ドリームカジノは明らかに違法であり有罪
ドリームカジノの運営者たちは、2016年に起訴され、9月に有罪判決を受けています。
実質的な運営者の会社役員は、懲役3年・執行猶予4年・約750万円の没収、従業員の男性2人には懲役1年6月・執行猶予3年が言い渡されました。
ドリームカジノはその後サイトの閉鎖が決まり、資金を取り出せないままプレイヤーたちは取り残されることになります。
2018年にようやくほかのオンラインカジノサイトが助けの手を差しのべ、サイトを経由して返金が始まることになりました。
しかしドリームカジノでの登録情報を基に返金手順の案内メールは送られており、すべてのプレイヤーに返金できたわけではないでしょう。
ドリームカジノ事件では、公開されている情報に実在するライセンス情が記載されていたこともあり、プレイヤー側が危険を察知するのは不可能であったとは言われています。
ただし利用者はそれを鵜呑みにせず、常にアンテナを広げておく必要があるということを実感した事件でもありました。
カジノ法案で日本の未来はどう変わる?
先だって可決されたカジノ法案は、日本の未来を大きく変えようとしています。
表向きは「カジノを含む統合型リゾート」を解禁し、海外から企業や顧客を呼び込もうという経済効果を狙ったものですが、もちろん日本国民が利用できる施設になることは間違いありません。
ギャンブル依存症の問題や治安の悪化など、デメリットのほうが大きく取り上げられていますが、海外ではランドカジノよりも安全性が高いという評価も聞こえてきたりします。
カジノ法案で日本の賭博罪の枠組みが大きく変わっていくことは容易に想像できますが、それに伴い今まで放置されていたオンラインカジノの違法性についても議論されていくことになるでしょう。
日本人 | 訪日外国人 | |
入場料 | 6,000円 | なし |
入場回数 | 週3回・月10回まで | なし |
本人確認 | マイナンバー提示 | パスポートの提示 |
日本は賭博に対する嫌悪感が強く、カジノを大っぴらに認めてしまうことはできません。
しかし海外では、老若男女が楽しむことができる社交場として認知されていることもあり、日本でもレジャー施設としての価値を高めていくような方向性を見出していくと言われています。
オンラインカジノに関しては、IRリゾートとは切り離して考えられていますが、「違法」という道筋ではなく、何らかの規制をしたうえで、条件付きの「合法」になる可能性があります。
はっきりとした答えが出るまでは、今までの逮捕実例をもとに、気を付けながら楽しむことが重要です。